
日頃は弊社の取り組みに、ご賛同・ご厚情を賜り厚く御礼申し上げます。
弊社が『家族に誇れる職場づくり』を経営理念に掲げ、経営改革に取り組みはじめたのは、2008年のことでした。
当時は創業社長が病気で倒れ、社員全員が混乱のなかで膨大な業務に追われておりました。その節には大変なご迷惑をお掛けしましたが、従業員たちは長時間労働と休日出勤を重ねてなんとか社業を継続してくれました。
そんな混乱のなかでは労災事故も避けられず、人手不足がさらに加速したこともありました。
そんな混乱のさなかにも、当社に期待し、お取引を続けていただいたお客様には感謝の言葉もございません。
世間では、「顧客満足」という言葉がもてはやされていましたが、そんなことを考える余裕すらなかったように思います。お取引先の皆様には、ずいぶんご迷惑をお掛けしたように存じます。
この苦難を乗り越えるために考えたことは、ただひとつだけでした。それはまず、すべての従業員が職場と仕事仲間に愛着を持ち、毎日の仕事に誇りを抱くようになることです。
それは遠い夢でした。
当時は会社経営の右も左もわかりませんでしたから、ワラをも掴む思いで方々へ勉強に出かけました。
そのなかに経営理念を作る一泊二日の合宿がありました。必死になって徹夜で書いた経営理念には、「お客様のために」「技術を研鑽し」「未来を作ります」などの言葉が踊り、うまくまとめられたと思っていました。
翌朝、衆目のなか当社の経営理念の評価がはじまります。そこで、あるベテラン同業社長様が、ポツリと一言おっしゃいました。
「中野さんの経営理念は、私ら職人には、寂しく聞こえますわ...」
その言葉を聞いた途端、工場内で真っ黒になって仕事に励む、ベテラン社員たちの姿が脳裏によぎり、次から次へと涙があふれてきました。
職人あがりの社長様は、孤児出身だと伺っていました。ひょんなことで任された会社を、何の後ろ盾もなく独力で切り回し、応募してくる者を全員採用し、ひとりひとりを大切に育て上げ、仕事を任せ、ハイレベルな仕事をしておられました。そして、我が子のような社員たちのために、大きな借金をして工場を新設されたばかりの頃でした。
私はそのとき、模造紙に書いた経営理念にマジックで大きくバツをつけ、以前から経営改善のスローガンであった「家族に誇れる職場づくり」を大書したのです。
弊社スタッフの一定数は、経営理念を見て、「家族的ないい会社なのかな?」と感じて入社してきます。その直感は外れてはいないのですが、現実は自分との対峙が何よりも重視される厳しい世界です。スタッフたちはその環境で、薄紙を一枚一枚重ねるように、プロの世界に分け入り、仕事の本当の面白さを実感していきます。
経営者である私は、彼らのその目線の先に、単なる言葉面ではない「本当の顧客満足」があると信じているのです。
「見て盗め」「挨拶する暇があったら手を動かせ」「怪我は自分の責任」という、昔ながらの町工場は、わずかな期間に大きく変貌しました。すべてはスタッフたちの「職場」を思う気持ちの現われです。
今では、わずかな期間に新入社員が育ち、技能者が育ち、スタッフ同士の協力関係が深まり、管理者が育つ会社になりました。
しかしながら、優良企業の多い弊社のお客様が求められる水準には、いまだ及ぶものではありません。日々の技能研鑽、品質向上、収益確保、採用と定着、新製品・事業の開拓など、山積する経営課題を解決しながら、未来へ向かって邁進してまいります。
今後とも温かくご支援をいただきますよう、心よりお願い申し上げます。
カワモト・マニュファクチュアリング株式会社
代表取締役 中野 幹生
カワモト・マニュファクチュアリング株式会社は創業半世紀を迎えた「ものづくり」の会社です。
当社はこれまで、公共インフラや産業機械の分野で長期にわたって使用される、信頼性の高い部品を供給し続けてきました。
それを支えるのが、お客様からの信頼と支援、ひとりひとりのスタッフの誠意と奮闘です。
当社が目指す「本当の顧客満足」を実現するためには、スタッフ全員がお客様のニーズを的確に読み取り、製品を通じて価値を具現化しなければなりません。それを実現するスローガンが、当社の経営理念である「家族に誇れる職場づくり」です。
当社がはじめて経営理念を掲げたのは、2008年3月のことでした。当時、工場内は足の踏み場もないほど散らかり、納期は遅れ、品質不良が頻発していました。「挨拶をするヒマがあったら機械を動かせ」という雰囲気でしたので、人間関係も殺伐としていたように思います。
「家族に誇れる職場づくり」は、そんなところからスタートしました。
足の踏み場もなかった工場を片付け、土間にコンクリートを流し、みんなでペンキを塗っていきます。床にはラインを引き、壊れた窓も補修しました。
改革には痛みがつきものです。ときに衝突し、ときにたたえ合う。職場を思う気持ちは、誰もが同じです。年月とともにそれは一つにまとまり、大きな樹に育っていきました。
「家族に誇れる職場づくり」には、3つの柱が存在します。それが「家族」「誇り」「職場」です。
家族は一番身近な他人です。職場は一番身近な社会です。個人がエゴを抑え、家族や職場のことを考え、行動することで、「利他性」や「社会性」が自然と身に着いていきます。
またそのプロセスで「誇り」が形成されるのです。仕事が「できた!」という実感は、はじめ「慢心」からはじまります。5年10年、慢心の日々が続き、やがて幾多の成功と失敗を経由して「誇り」へ変わっていきます。その頃には、皆さんも周囲からの賞賛と尊敬を集める存在になっていることでしょう。
当社の誰もが実現できる未来です。
「誇り」といえば、日本の高度成長期には、MADE IN JAPAN という言葉が子供たちの間にも広まっていました。それは世界で一番の高品質の証でした。
資源のないこの国にとって、素材を加工し、高機能な製品を作り、国内外に広く販売していくことは、かけがえのない「価値創造」の営みです。
それを支えているのが、「ものづくりのDNA」なのです。
「ものづくりのDNA」は、人と人との間で数百年、数千年にわたって引き継がれていきます。自然界のDNAの二重らせんのように、創意工夫や発見が、人と人との間で相互作用をなして、巧妙に受け継がれています。誰もがその歴史的な営みに加わることができます。
「ものづくり」ほど公明正大な仕事はありません。誇りをもって取り組める一生の仕事です。何年やってもまったく飽きることがない、素晴らしい仕事だと思っています。
僕たちと一緒に、最高の職場をつくりましょう。

~2007年頃~
カワモト・マニュファクチュアリング株式会社
代表取締役 中野 幹生